✽ ページ20
しーん、と無言の時間が二人の間に流れる。
『えー……っと、ごめんね?きりやん昔からあぁで。ちょっと過保護というかなんというか……』
「Aさんを大切にしてるのは知ってるけど、あそこまでとは思わなかった。愛されてんね?」
『あはは、そうだねー……』
会話をしてはみるけど、いまいち拭いきれない気まずさ。とりあえず大事にはならなかったけど、きりやんの事だから勘づいていても不思議ではない。油断は禁物だな……。
「俺、きりやんにバレたら殺されそー」
『うん、間違いなく殺される』
「まぁでも………ここまで来たら離すつもりなんてないよ。Aさんの人生狂わせてでも離さないから」
ゆらり、と赤みがかった瞳が揺れる。それは私の事を掴んで離さない、人の形をしている別の何かが人間という存在の私を捕らえ、食べ時を待っているような獣のような表情だった。脅迫に近い宣言だというのに、どきんと心臓が高鳴って、彼の瞳から目を離す事が出来なかった。僅かにつり上がった口元も相まって、歳に不釣り合いな、何処か妖艶な雰囲気を醸し出していた。
「……っあ、でも、離さないって言っても、そのなかでAさんが幸せになるように努力はするつもりだし、だからもし困った事とかあったら俺に何でも言って」
『きんときくんに離されなくて正直困ってる』
「デスヨネー!」
なんて何気ない会話を交わしながら二人で笑い合った。本当は交わってはいけない禁断の関係だけど、これからも、この先も、こうやってきんときくんと笑っていたらいいな。なんて淡い理想を抱きながら微笑む。
「………A。………、って呼んでもいい?」
私の名前を呼ぶ優しい声がそっと耳に触れる。いつもとあまり変わらない、たかがいつも名前の後ろについていた“さん”の二文字が無くなった、たったそれだけだというのに。顔に一気に熱が広がって、きゅうと胸が締め付けられる。けれど、きっと目の前のきんときくんには、動揺する私とは相まって涼しい顔……とまではいかないけど、普段通りの表情で。何だか少しズルく思える。
『……うん、』
「Aも俺のこと呼び捨てでいいよ」
『う……善処します』
「それ一生呼ばないやつだ」
付き合いたてのカップルかよ!と思わずもう一人の自分がツッコみたくなるような言葉を交わして、その直後の予鈴に二人して慌てて教室へ戻った。
269人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
神崎いのり(プロフ) - ゆのさん» 返信が大変遅くなってしまい申し訳ございません。コメントありがとうございます…!そう言って頂けてとても嬉しいです🥰緩くではありますがちまちまと更新していきますのでお付き合い頂けると幸いです✨ (4月19日 16時) (レス) id: 8fac357c0d (このIDを非表示/違反報告)
ゆの(プロフ) - ほんとにとても癖です、、、!!!更新待ってます😿 (12月28日 15時) (レス) @page11 id: 8aabdc3085 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:神崎いのり | 作成日時:2023年12月15日 23時